カンボジア不動産投資は、先進国にはない新興国ならではのメリットが多く存在し、そこへカンボジアならではの利点が組み合わさることで魅力的な投資先となっています。カンボジアで不動産投資を始める際には次の特徴とポイントを押さえておきましょう。

インカムゲインとキャピタルゲイン

不動産投資における収益には、家賃収入による「インカムゲイン」と、不動産価値の上昇による売買差益の「キャピタルゲイン」の2つがあります。これらは、人口増加と経済成長の双方が上向きである国の方が収益性が高くなります。人口の増加は住宅需要の増加に比例し、賃金と物価の上昇とともに将来的な住宅価格や家賃の増加が見込まれるためです。 日本や先進国に比べ、東南アジアの不動産投資では成長の伸び代が最も大きくなります。 カンボジアの不動産投資でもキャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙った投資が可能です。

投資対象は土地か、建物か

カンボジアでは外国人は土地を購入できないと聞いたことがある方は多いでしょう。その通り、カンボジアでは、個人・法人に拘わらず外国人が土地を所有することは禁じられています。外資参入が広く許されるカンボジアであっても、土地の所有まで自由にとはいきません。日本では外国人の土地取得に規制がありませんが、外国人の土地所有は国家の存立に関わる問題であるため、海外の多くの国が禁じるが厳しく規制をしています。

しかしながら、カンボジアではノミニー制度が利用できるため、実際はカンボジアの土地を所有している外国企業や外国人はたくさんいます。しかしコンドミニアム販売などよりも手続きが増えるため、仲介手数料を目的としているようなエージェントや不動産会社では取り扱うことが少なくなっています。正しい情報を得れば投資の選択肢を増やすことができます。建物であればインカムゲインもキャピタルゲインも狙えますし、土地であれば建物よりもインカムゲインは狙いにくくなりますがその分維持管理が非常に容易であるという利点があります。

カンボジアにおける外国人の不動産所有権

カンボジアでは不動産所有権に置いて、カンボジア国籍を持たない外国法人や外国人に対し規制を設けています。外国法人の定義は、51%以上の株数をカンボジア国籍者が持っていない法人となります。土地の所有については前項の通り禁止されています。

アパートやコンドミニアムなどの集合住宅については、2010年の法改正によって非居住者の外国人でも保有することが可能になりました。地下と一階部分を除いた、2階以上の上層階部分を保有することができます。また、外国人枠としては物件ごとに建物の総占有面積の70%が上限とされています。

また、合意による不動産の所有権移転は、登記の移転をもってはじめて効力を有する、とされています。そのため権利を主張するには、きちんと登記をして権利書を得ることが重要になります。所有権移転登記については不動産譲渡税(譲渡価格の4%)等の納付手続があるため、1カ月半~2カ月を要します。コンドミニアムなどの区分所有建物の登記はさらに時間がかかる傾向にあります。

カンボジアでローンは組めるか

カンボジアの不動産投資では自己資金をご用意されることをおすすめしています。カンボジア国内の金融機関では現在マレーシア系銀行であるRHBカンボジア等一部の銀行で外国人向けの住宅ローンの提供をしていますが審査が厳しくローン金利は8%台と高くなっています。

融資を考えるのであれば日本国内の金融機関で担保ローンを選択することがまだまだ現実的と言えます。しかしフルローンが利用できるとは限りませんので、自己資金搬出も踏まえ申し込みの前に金融機関ごとの担保条件の確認が必要です。

カンボジアの賄賂社会

カンボジアに限った話ではないですが、発展途上にある国に必ずと言っていいほど存在する「賄賂社会」がカンボジアにもまだあります。今は減りつつありますが、外国人が運転していると違反がなくても車を止められお金を請求される、登記手続きの際に外国人だとわかると担当職員が追加料金を請求してくるといったことが過去にあります。日本ではあり得ないことなので驚かれますが、こういったローカルな事情もサポートしてくれる不動産会社を選んでみてください。

面積表記は2種類ある

面積の表記には「グロス面積」と「ネット面積」という2つの表示方法があり、海外不動産では記載されている面積表記が「グロス面積」であることが多いです。カンボジアでは面積表記は統一されていないため、コンドミニアムなどの実際のお部屋の広さを知りたい場合はネット面積を確認しましょう。

カンボジアにおける「ネット面積」は、日本でいう専有面積を指し、住戸内の専有部分の面積とバルコニーやベランダの面積を足したものです。「グロス面積」は、共用廊下や階段その他の共用部分の面積が含まれた建物の延床面積を、各ユニットに割り振ったものです。そのためグロス面積は管理費の計算などで用いられますが、実際の住戸面積と捉えるには不適切です。また、㎡単価を確認する際も、ネット面積とグロス面積のどちらを元にして算出されているのか確認する必要があります。

ハードタイトルとソフトタイトルの違い

カンボジア不動産の所有権登記には、「ハードタイトル」と「ソフトタイトル」という2種類の権利書があります。日本でいう権利書に該当するのはハードタイトルです。更にハードタイトルには2種存在します。その一方で、ソフトタイトルは不動産所有権の証明ではなく「不動産売買が行われたことの証明」として機能します。カンボジアの不動産投資ではハードタイトルを取得します。ハードタイトルはコンドミニアムなどの区分所有でも発行されます。

カンボジアではポル・ポト政権時代の土地所有の否定とその後の内戦から1979年以前の不動産所有権が無効となっています。外国の支援を得て権利を復活させましたが、時期による支援主体の違いからハードタイトルが2種存在することになりました。効力は同じです。

2017年9月末時点で国土の約65%がまだ未登記の状態でしたが現在少しずつ登記が進められプノンペンでは新ハードタイトルが整備されつつあります。新ハードタイトルはデータシステム化されているため、行政機関による整備が追い付かないエリアでは新ハードタイトルに移行することができません。そのため、各タイトルの性質上、実務ではソフトタイトルだから劣っている、ハードタイトルだから価値が高い、とは一概には言えないのです。

税制と租税条約

カンボジア含め、日本国外で不動産を購入し所有したということだけでは、日本で課税されることはありません。しかし日本は、たとえ世界のどこで稼得した利益であろうとも課税する”全世界所得課税”の考え方から、所得が生じた場合には課税されます。その時、カンボジアと日本はまだ租税条約が締結されていないので、居住地国である日本と源泉地国であるカンボジアとの間で二重課税が生じます。 カンボジアの不動産投資を検討するには、カンボジアでかかる税金と日本でかかる税金を把握しておきましょう。

カンボジア国内でかかる税金とは?
カンボジアでも、不動産を取得したときや所有しているとき、不動産によって収入を得たとき、不動産を売却したときなど、各場面でかかる税金があります。しかしカンボジアは税法整備の途中段階であり、実情運用されていない税金もあります。『カンボジアの税制度について』で詳しく説明しています。

日本国内でかかる税金とは?
カンボジアで家賃収入を得たり売却差益が出たときなど、所得が生じた場合にはじめて課税されます。それらは日本では賃料所得と不動産譲渡所得税として課税されます。また、保有する海外資産の総額が5,000万円超の場合は、確定申告時に「国外財産調書」という海外資産に関する報告書を税務署に提出する必要があります。

今後の日本とカンボジアの租税条約
カンボジアは、シンガポール・中国・ブルネイ・タイ・ベトナムとの間で租税条約を締結済みです。そして現在カンボジア政府は、日本・韓国・マレーシア・フィリピンとの間で租税条約の締結に向けて交渉を行っています。近い将来、日本とカンボジアの間で租税条約が締結される可能性は高いと思われますので、今後の動きにも注目しておきましょう。日本から見た租税条約締結状況は下図を参考にして下さい。

情報収集と不動産会社選び

カンボジアでは信頼できる不動産会社を見つけることが重要です。海外不動産は言語の違いや土地勘の乏しさからどうしても入手できる正確な情報量が減ってしまい、また自ら調べることも困難です。現在のインターネット環境であっても、最新で且つ正しい情報を入手するのは難しいと言えます。

カンボジアでは経済成長が著しいのに比例して法律などの整備も次々とアップグレードされます。更に担当者によって返答がバラバラであったり、何か変更があっても相手側から知らせてくれる場面は少ないため工夫が必要です。

カンボジアでは英語が使えますが、細かな内容を精査したり、商談や交渉時において有利に進めるには現地人同士のクメール語での会話が重要ポイントになります。また、公的書類はクメール語表記でなければなりません。英語も併用されていますが、クメール語から英語、英語から日本語への翻訳では解釈やニュアンスが変わる可能性があります。

日本語が通じる安心感のみから日系の会社を選択するのではなく、現地に拠点を構えているか、登記されているか、現地に精通しているか、通訳やどこまでサポートをしてくれるのかなどを見極めて選びましょう。カンボジアで弁護士を選任する場合は、本来の役割を考え、いざという時に法廷でクメール語で争える弁護士に依頼することが一番安全な方法といえます。

注意すべきポイントを押さえ、 不動産業者や物件の選び方、分散投資でリスクを軽減しながら魅力的なカンボジアの不動産投資を考えてみてはいかがでしょうか。