経済回路、外洋、メコン川を擁する立地の良さ

カンボジアは、陸のASEAN 5か国の中心に位置します。首都プノンペンは、タイの首都バンコク、ベトナムの最大都市ホーチミンの中央に位置し、現在ミャンマーまで延長されている「南部経済回廊」といわれる産業道路で結ばれています。カンボジア南部は外洋に面し、シハヌークビル国際港が海上貿易の拠点となっています。

カンボジアを縦断するように流れるメコン川は首都プノンペンを経由し、プノンペン自治港(PPAP)が河川貿易を担っています。メコン川流域5か国であるカンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオスはメコン経済圏を形成し国内外の企業進出を加速させています。この好立地こそが、カンボジアがASEAN経済共同体(AEC)における経済発展をになう国として隣国に匹敵するポテンシャルを獲得する可能性を高めていくことになります。

給与が10数年で倍になるほどの経済成長

カンボジアは直近10年のGDP成長率が毎年7%台と高値で推移し、リーマンショック後の回復も著しいものでした。労働力・購買力・消費のそれぞれが堅調に増加し、これは東南アジア諸国でも屈指の高成長ぶりで、過去に類を見ないほど顕著だと言われています。チャイナプラスワンのタイとベトナムに挟まれるカンボジアには、2010年頃から低廉な人件費に着目した外資企業が生産拠点の一部をシフトさせる、「チャイナ・プラス・ワン」または「タイ・プラス・ワン」という動きが目立つようになり、日本企業の進出も増加しました。

急速な経済成長と安定した政治情勢を反映して、多くの外国企業がカンボジア市場に進出してきています。カンボジアではASEAN物品貿易協定(ATIGA)、日本・ASEAN FTA、中国・ASEAN FTA等の利用による関税の減税・免税措置を受けられることも強みです。加えて、外国企業や外国の投資家から見ても、米ドルが使えるカンボジアは為替リスクの少ない投資先となります。ハード面とソフト面のインフラを整備することで経済成長を促進させています。

平均年齢27歳、人口の約半数が30歳以下

カンボジアの人口は1,550.2万人(カンボジア人口ルネサンス調査2019、他海外就労者人口は123.6万人)で、2021年に発表された平均年齢は27歳( 日本は世界トップの45歳 )と若く、国民の約半数が30歳以下です。人口増加率は年1.4%、人口爆発は始まったばかりで少なくとも2045年まで続くといわれています。

きれいなピラミッド型の人口分布は、年少者人口が約29.4%、労働年齢人口は約61.7%、高齢者人口は約8.9%(日本の65歳以上比率は28.4%)となっています。高度成長のチャンスは”子供の比率が減少し且つ労働年齢人口が増加するとき”と知られていますが、カンボジアの人口は、2008年の同調査から年少者人口が4.3pt減、労働年齢人口が1.7pt増となり、今まさにその時期を迎えたと言えます。

労働力人口は約1090万人で今後も急激に増えていきます。首都プノンペンの人口は213万人、都市人口率も依然低く今後都市部への人口流入が考えられます。今後の人口ボーナスの恩恵と、それにともなう購買層の増加が期待され〝経済発展の伸びしろ〟のポテンシャルに満ちています。

米ドルで生活、預金、ビジネス、投資ができる

カンボジアでは生活のほとんどの場面で米ドル(USD)を使うことができます。自国通貨のリエル(KHR)と両立しており、街では両通貨で価格が表記されています。日常の買い物はもちろん、給与の受取、銀行への預金、不動産の購入や投資、現地法人の設立時も米ドルが使用できます。多くの国で自国通貨に制限されることが多い中、ここまで自国通貨同様に米ドルの使える国はアジアでは他にないでしょう。

カンボジアでは外国人非居住者でも米ドル建の口座開設が可能で、年利6%以上の高金利で定期預金を組めるような銀行が複数あります。カンボジアではキャッシュレス化が進み、QRコードでの支払いや銀行アプリの非常に早い送金など、便利に行うことができます。カンボジアは外貨規制がほとんど無いため、最終的な出口としても海外へ資金を持ち出すことに制限がないというのは重要なポイントです。

現在では流通額の90%以上が米ドル、預金口座の米ドル率も90%以上となっており、米ドルで生活、預金、投資、事業を行うことができることは多くの国の企業や人々にとって魅力的であることは間違いありません。

英語が通じる

カンボジアの公用語は「クメール語(Khmer)」で、文字は「クメール文字」です。文法は英語と同じですが、日本人にはなかなか慣れない文字のかたちをしています。現地の方同士はクメール語で会話しますが、カンボジアの都市部は大抵どこへ行っても英語が通じます。大抵クメール語に併せて英語でも表記されており、英語が通じる点は生活やビジネスをする上で非常に魅力的です。

カンボジアでは仕事のために英語を学び直す方も多く、特に多国籍な企業が進出する首都プノンペンでは、英語に加え第三か国語を話すトリリンガルの方も多いです。GDPがカンボジアよりも高い隣国と比べても、はるかに英語が通じ聞き取りやすい英語です。しかし公文書はクメール語で、ボールペンのインクは青が基本となります。

ビザの取得が容易

カンボジアではビザを取得するために高額な費用が掛かったり、一定金額を預金しておかなければならないといった条件はありません。カンボジアは入国ビザと滞在ビザがあり、外国人は入国ビザを取得する必要があります。入国ビザは誰でも容易に取得できますので、カンボジアでの30日以内の滞在は何ら問題なく、短期出張や観光であれば入国ビザのみで足ります。

30日以上続けて滞在する場合には滞在ビザを取得します。現地で就労される方や留学されるなど長期滞在の場合もこの滞在ビザを取得します。滞在ビザはビジネス、求職者、リタイア、学生の4種類がありますが、最も一般的なのがビジネスビザです。必要書類さえ添付すれば最長1年の滞在を何度でも延長していくことが可能です。

法人設立のハードルが低い

カンボジアは外資100%の法人設立が可能です。外国人1人から現地法人を設立することができます。外資規制は緩く、海外への送金規制がないなど、外国企業が参入しやすい環境となっています。カンボジアの法律は、基本的に投資を奨励するように設計されており、土地所有を除き内国法人と差別なく扱わなければならないとされています。そのため開放的で多くの分野で自由に進出することが許されています。

法人口座もドル建てで開設でき為替リスクが少ないうえ、カンボジア国内における外貨保有・取引が自由であり、外貨持込額および持出額に関する規制もありません。そのため事業資金の借り入れや融資を自国で行い、カンボジアへ送金するといった方法をとることも可能です。

カンボジアは「前払い法人税」という、毎月の売上高の1%を月次で申告納付しなければならない制度がありますが、2019年5月に来日したフン・セン首相が制度の撤廃を宣言したことで、今後実現すれば日系企業のカンボジア進出の障壁がさらに低くなることは間違いないでしょう。

インフラ整備と政府の後押し

カンボジアでは道路、上下水道、電気、通信などの計画的インフラ整備が急ピッチで進められ、政府と民間の連携のもと大規模な開発が次々とスタートしています。 カンボジアの発展は政府主導によるマスタープランをもとにしています。途上国の計画は変わりやすいと言われますが、カンボジアのマスタープランは現在に至るまで着々と計画を進めており、一概にそうとも言えません。

また過去10年間急速な都市化を遂げるプノンペンは、経済発展と人口増加に対応するために都市の拡大が必要となりました。2010年には7地区だった区(Khan)はいくつかの区が分裂・新設され、現在のプノンペンは14区となり、面積は376.17㎢から、東京都23区とほぼ同等の広さの678.46㎢へと倍増しました。都市人口も増加していますが、依然低い都市人口率からみてもプノンペンへの人口流入はまだまだ続きます。現在のプノンペンは中心部周辺の副都心化を図っており、2035マスタープランでは更なるプノンペンの拡大が示唆されました。